

監督:ローランド・ズゾ・リヒター
出演:ハイノー・フェルヒー
ニコレッタ・クレビッツ |
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「愛と自由への渇望」は、人々の友情と絆を生み、あらゆる困難を乗り越えた・・・。東西ベルリンの冷戦下、祖国をふたつに分けた『壁』の下にトンネルを掘り、29人にも及ぶ人々を亡命させた実話である。歴史の重みのただならぬ迫力に圧倒され、実話の凄みが画面に目を釘付けにして離さない。
映画界には「脱走ものにはずれはない」という伝説さえ残っている。『穴』『大脱走』『ショーシャンクの空に』など、これらと共通するものは自由を求める主人公たちのその揺るぎない信念に、観る側の魂が揺さぶられるからだ。それが極限状態であればあるほどに・・・。それでいて決して暗く、陰惨にならないのは、ヒーローアクション映画を観るかのようなスリルと躍動感に満ちているからだ。だから3時間近い作品も全く飽きることがない。
ラストに至る脱出劇の息を飲む緊張感が爽快な、そして感動の終幕を用意してくれる。ドイツ映画ならではの歴史認識の鋭さも手伝って、底力を知らされる秀作である。 |
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監督:フォ・ジェンチイ
出演:トン・ルゥジュン
リィウ・イェ
ジャオ・シィウリ |
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耳を疑うというか、目を疑ったのは犬の名前「次男坊」。一人っ子政策だからかと合点がいった。舞台は中国湖南省。最南端にある広東省(香港のすぐ上)の北隣が湖南省だ。もうとてつもなく田舎風景が広がる。緑が美しく、中国の雄大さを実感する映像が広がる。
この映画は、映画祭を企画した当初から上映したいと思っていた作品。地味で素朴だけど丁寧で丹精のこもった映画だ。ちなみにこの作品は一九九九年中国金鶏賞(中国アカデミー賞)最優秀作品賞・最優秀主演男優賞を受賞したほか、モントリオール映画祭でも観客賞を受賞するなど、国内外で評価の高い中国映画。
原題は「那山 那人 那狗」といって意味は「あの山、あの人、あの犬」という。犬も主役なのだ。最後にフォ・ジュンチィ監督の言葉をお伝えしよう。「大きなスクリーンの中で、素晴らしい背景の中で観てもらうのが一番だと考えたから映画にした。是非スクリーンで見てほしい」 |


監督:マイケル・カーティス
出演:ハンフリー・ボガード
イングリッド・バーグマン |
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1941年に主演した「マルタの鷹」からハードボイルドヒーローというイメージが定着したボガート。ハリウッド屈指の美形、バーグマン演じるイルザに「君の瞳に乾杯!!」等の粋な名セリフをはき、常にシャンパンを手離さないダンディーな姿と、最期には「成すべき事は成す」男の魅力がいっぱいです。
そして忘れられない主題歌「AS
TIME GOES BY」。この時期にぴったりのロマンティックな詩をご紹介します。
「これだけは忘れないで欲しい。キスはキス、ため息はため息、時が流れても。恋人が囁く言葉はいつも同じ、アイラブユー。月の光やラブソングは時代遅れにならない。胸いっぱいの情熱、やきもち、にくしみ。人は愛する人無しに生きていけない。時代がどんなに移り変わっても。」
映画の後にはお酒でも。ボギー流にシャンパンならG・Hマム社のコルドンルージュで。くれぐれも「君の瞳に乾杯!!」をお忘れなく。 |


監督:ジャック・ドワイヨン
出演:ヴィクトール・ティヴィソル
デルフィン・シュルツ |
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「全能の神様、ママは死にました。神様と一緒のはずです。ママに私とお話しするよう伝えてください。」
大人にとっても受け入れがたく不可解な“死”。たった4歳で最愛のママを失った少女ポネットが、残酷で悲しい暗闇の中で手探りしながらも死と向き合い、受け入れ、乗り越えていく・・・。
終始子供達の視線で展開される描写。最初は幼児特有のゆっくりした動きや感覚に違和感を覚えながらも、次第に自分自身がそうした視線を持っていた頃に連れていかれてしまう。また親の立場から見れば、近親者の“死”を子供にどう教えるのか?について考えさせられる映画でもあります。加えてポネット役のヴィクトワール・ティヴィソル(最近では「ショコラ」に出演)の可憐な外見に加え、4才にして恐るべきその演技力!史上最年少でのヴェネチア映画祭主演女優賞受賞も頷けます。
映画館の闇の中、忘れかけていたあの頃の無垢な気持ちに戻ってポネットと一緒に思う存分泣きじゃくってください。 |


監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:フィリップ・ノワレ
ジャック・ペラン |
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物語は(第二次世界大)戦後間もないシチリア島で過ごした映画が大好きな少年の少年時代と青春時代の追想。田舎町のたった一つの社交場が映画館「ヌオヴォ・キネマ・パラディーソ(パラダイス座)」。映写技師アルフレードと、トト・サルヴァトーレとの友情、そして恋をした少年トトが成長していく姿が描かれます。
30数年前のシチリアの田舎町は正にスロータウンそのもの。そこを通して交わる、心ゆたかで、優しき人々の生き方を通して、もう一度、人生振り返り、これからを考えてみては。この映画は映画館が大事な舞台であり、この映画は、映画館が「ふるさと」です。ご家族、友人、恋人など、本当にあなたが今大切な人といっしょにスロータウン劇場にてご覧下さい。
「泣いて、笑って、恋をして」と言いますが、エンリオ・モリコーネの、もはや古典にさえなったあの美しい調べに酔い、既に伝説となったラストシーンに涙することでしょう。松葉町で生まれ、大劇と、メトロの隣で青春を過ごした私達兄弟にとって文句無しに最高の作品です。 |