ここが見所

ベイビー・ブローカー(2022年/是枝裕和監督)

共田慎性

実行委員会 理事
(株)エクスラージ代表取締役、アートディレクター

「万引き家族」の日本を代表する是枝監督が、韓国に単身乗り込んで、俳優スタッフ全員が韓国人という状況で撮った意欲作。

主演は「パラサイト」の韓国が誇る名優ソン・ガンホ。実は私、大のソン・ガンホファンでして、ポンジュノ監督初期の傑作「殺人の追憶」と、光州事件の実話をもとにした感動作「タクシー運転手 約束は海を越えて」は、私のお気に入りでお勧めの作品です。

「赤ちゃんポスト」「人身売買」といった重い題材の韓国映画となれば、さぞシリアスでダークな内容だろうと予想していましたが、そこは是枝監督作品、ほのぼのとユーモラスに、柔らかい雰囲氣の中、物語は進んで行きます。

赤ちゃんポストの赤ん坊を横流しするブローカー。犯罪者でありながら、自称善意のブローカーとして赤ん坊の幸せを祈る姿は、ソン・ガンホが得意とする「どこか憎めない魅力的なおじさん」そのもの。子を捨てた母への嫌悪感を露わにしながらブローカーを追いかける女刑事。子を捨てしまった後悔と葛藤を抱きながら、気持ちが変わっていく母親。赤ん坊をめぐる登場人物たちの変化こそ、是枝監督がこの作品で一番描きたかったテーマなのかも。登場人物が幾重にも交差するそれぞれの描き方が素晴らしく、家族の在り方について考えさせられる作品になっています。

ロードムービーということで美しい街並みを堪能することもでき、なんだかとても温かい気持ちに。
捨てられた赤ん坊の売買という、一見救いようのないテーマながら、心が救われるような感動作です。


上映日/2023年2月12日(日)9:30〜
提供=オーギヤグループ