ここが見所

ドリームプラン(2021年/レイナルド・マーカス・グリーン監督)

山下将司

実行委員会 企画理事

テニス界で史上最強と言われた姉妹を世界チャンピオンに導いたのは、お金もコネも、そしてテニス経験もない、そんな父親が独自に研究し作り上げた78ページに及ぶ”計画書”だった。しかもその計画書は、姉妹が生まれる2年も前に用意していたという。姉妹の名前は、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ。そう、これは実在する家族をモデルにした実話なのである!

ではこれが「家族で勝ち取る感動のアメリカンドリーム」という”良き物語”に回収されるかというと、話しはそう単純じゃない。ここにこの映画の面白さがある。

物語の発端であり、驚きの実話であることを端的に示すアイテムとして「ドリームプラン」という邦題は悪くないが、原題は「キング・リチャード」。本作の主人公であり、姉妹の父親であるリチャード・ウィリアムズを指す。シェイクスピアの戯曲に登場する独善的な暴君「リチャード三世(King Richard Ⅲ)」になぞられているわけだが、なるほど。

映画はリチャードを性格的に相当難がある人物として率直に描く。自らの計画に沿わないことは叩き潰す。協調性とは無縁だ。行動原理の根底にある家族への愛は、人間臭いエゴと渾然一体でもある。狂気じみた信念の人?毒親?銭ゲバ?それとも。絶妙なニュアンスでリチャードを演じ、本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞したウィル・スミスの演技が最大の見所だろう。

さて、それではあなたの評価は?物語を見届けた時、きっと誰かと感想を交換したくなるはず。家族や友人と連れ立って鑑賞されることをぜひお勧めしたい。


上映日/2023年2月5日(日)13:30〜
提供=株式会社物語コーポレーション