ここが見所

ひまわり(1970年/ヴィットリオ・デ・シーカ監督)

伊藤雄章

実行委員会 理事
豊橋自転車競技協会 会長

私が東京で過ごした1960年代後半から70年初めの頃には、名画座と呼ばれた映画館が都内に沢山あった。スポーツ新聞の映画案内を調べては、この格安の旧作映画を観に通った。

「ひまわり」を最初に観たのは、この映画と同じソフィア・ローレンとマルチエロ・マストロヤンニが共演した「昨日、今日、明日」の抱き合わせだった気がする(曖昧)。そして2回目に観たのが、私の名画座スロータウン映画祭での上映だった。映画祭では既に2回上映されている人気の作品だ。内容はすっかり忘れてしまっていたが、スクリーンいっぱいのひまわり畑とミラノ中央駅での別れのシーンは特に印象に残っている。

この映画の舞台は第二次世界大戦中のイタリア。陽気なナポリ娘のジョバンナとアフリカ戦線行きを控えたアントニオの波乱に満ちた人生を描く。二人は海辺で出会い、すぐに恋に落ち結婚。新婚生活もつかの間、若さゆえの過ちから熾烈なソ連戦線に送られることに。アントニオは「土産は毛皮だ」なんて軽口をたたいているが、これから過酷な運命が待っていることなど二人はまだ知らない。

そして映画は、厳寒の雪の中を歩くアントニオ、見渡す限りのひまわり畑を前に呆然とするジョバンナ、美しいロシア女性と幼い子、工場労働者を乗せた汽車と駅、終盤のミラノのアパートでの再会、そして赤ん坊の泣き声が・・・。映像は抒情的に私たちに迫り、そんな美しいシーンにヘンリー・マンシーニの音楽は悲しく静かに流れる。

戦争によって、辛くとも必死に生きようとするジョバンナと、生死をさまよい本来の陽気さを失ってしまったアントニオとの別れのシーンは感動的だ。


上映日/2023年2月4日(土)9:30〜
提供=株式会社オノコム