ここが見所

いつかの君にもわかること(2020年/ウベルト・パゾリーニ監督)

山口徳之
主人公は窓ふき清掃員として働く33歳のシングルファーザー。不治の病を患い、余命わずかでありながらも、幼い一人息子を育てている。自分亡き後、息子が暮らす家族を探すため、里親になることを希望する資産家や多くの里子を育てる夫婦、シングルマザーなど、様々な家庭と面会するが、息子にとって何が最善の選択なのかわからなくなり立ち止まってしまう。欧州の美しい風景を背景に「おみおくりの作法」のウベルト・パゾリーニ監督が描く実話に基づいたヒューマンストーリー。

若くして病魔に犯された主人公は、自分の死を受け入れることができず苦しい日々を過ごすことになる。死とは何かを考え続けることで、徐々に死を受け入れ、死への恐怖を克服していく。だが、主人公が抱えるのは「死」という悩みだけでない。その対極にある「生」も悩みだった。自分の死後、幼いわが子にどう生きてほしいのか。そのためにどの里親に息子を託すのが良いのか。わが子のこれからの「生」という問題にも苦しんでいた。決断できないのは自分自身が死を受けいれていないこと、生への未練から来るものだった。 しかし、自分の死を受け入れたことで、全ての悩みに答えがでる時が訪れる。その時に見せる主人公の笑顔が、全てを悟った人のようで清々しくスクリーンに広がる。

様々な映画で描かれ、不変のテーマである「生」と「死」を親子の愛を通じて描く本作品をスロータウン映画祭でお楽しみ下さい。


上映日/2024年2月24日(土)13:10〜
提供=小池商事株式会社