ここが見所

パリタクシー(2022年/クリスチャン・カリオン監督)

伊藤篤哉

実行委員会 理事
(株)吾妻家 代表、豊橋市 市議会議員

パリの街角で繰り広げられる、「まさか」が詰まった老壮名優による真のコメディ作品。渋滞のまちパリのタクシー運転手“シャルル46歳”は、お金、免許、お休みに行き詰った毎日。そのシャルルが受けた仕事は、パリ郊外のマダム“マドレーヌ92歳”を、パリとは言え、かけ離れた施設へ送る「終活」の仕事。

その仕事の中で、最後の願い『寄り道』を引き受けたことで、マドレーヌから語られるナチス占領下での青春はじめ、今を生きるシャルルと、パリ名所、素敵なジャズクラブやビストロなどが、タイムマシーンの様に、ひとつの場所が時間軸を越えていくつにも重なる作品。

シャルルを演じるのはコメディアンのダニー・ブーン。マドレーヌはレジオン・ドヌールに輝くシャンソン歌手リーヌ・ルノー。マドレーヌがタクシー車中で語る父の格言『ひとつの怒りでひとつの老い、ひとつの笑顔でひとつ若返る。若くありたいなら何をすべきか』と、格調高く静かに仏語で語る場面こそ正にエスプリ。磨き抜かれた哲学とともに、笑いと涙が止まりません。カリオン監督は「マドレーヌ、彼女を演じたルノーの人生を観て、“生きるヒント”を見つけて欲しい」と述べています。

老齢化した親とどう向き合うかというのは、誰もがいつかは直面する難問。私の大好きな詩人谷川俊太郎さんは、94歳のルノーが92歳のマドレーヌを演じている、91歳の私にとり、この映画はどの場面も我が事のように『面白く切実』と述べています。


上映日/2024年2月18日(日)13:10〜
提供=豊橋信用金庫