ここが見所

アダマン号に乗って(2022年/ニコラ・フィリベール監督)

佐々木順一郎

実行委員会 会長
映画コレクション・しねとろ倶楽部 主宰

パリのセーヌ川に浮かぶデイケアセンター船「アダマン号」にカメラを向けたドキュメンタリー。2023年・第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金熊賞を受賞したフランス・日本の合作映画。

セーヌ川の木造建築の船「アダマン号」は、精神疾患のある人々を迎え入れ、文化活動を通じて彼らの支えとなる時間と空間を提供し、社会と再びつながりを持てるようサポートしているユニークなデイケアセンター。アダマン号(ダイアモンドの芯の意味)は朝になると窓が開き、患者と医療者たちが乗り込んでくる。彼らは食材を調達し、調理してジャムやコーヒーを淹れて自身で販売する他、船内のデコレーションの絵を描き、映画鑑賞会を開くといった活動を自らの話し合いで決めて実行しているという情景を、患者&医療スタッフ一人一人の個性を引き出しながら映し出してゆきます。

これまでも、1992年「音のない世界で」(ろうあ)や1996年「すべての些細な事柄」(精神疾患)で、彼らを個性豊かな人間として捉えてきたニコラ・フィリベール監督らしく、本作の患者たちも親しみを感じさせる豊かな感情の持ち主であることを提示していて、普通の人々と同等&それ以上の感性を見つめてゆきます。

この映画は、医療側からの指導という形を取らない自律的な運営でも、精神医療を施すことが出来、患者たちの自覚と自立を促し、積極的な社会活動の向上をもたらすことを示していて、身体拘束より人間には自由な自己発現が大切であることをメッセージとした「優しい」映画です。是非ご覧下さい。


上映日/2024年2月11日(日)9:30〜
提供=大三コーポレーショングループ