ここが見所

ルパン三世 カリオストロの城(2023年/宮崎駿監督)

上栗陽子

実行委員会 理事
穂の国とよはし芸術劇場 事業制作リーダー

本作ほど、公開当時の映画館ではなくテレビや近所の上映会で観た人が圧倒的多数の作品はないのではなかろうか。
宮﨑駿監督の長編デビュー作で、前年にヒットした劇場用第一作「ルパンVS複製人間(クローン)」に続く第二作として1979年12月に公開された。興行成績は成功とはいえなかったが関係者の評価と度々のテレビ放映、そしてジブリ作品の飛躍的な人気とともに名作と語られるようになったのは有名な話。「Love Letter」の岩井俊二監督も大学時代に映写機とフィルムを積んで小さなスーパーを回る上映会のバイトで50回以上観たと著書で語っている。スロータウン映画祭では昨年の「風の谷のナウシカ」に続く宮﨑アニメの上映だ。

監督自身が本作を“大たなざらえ”と称しているほど“漫画映画”としての真骨頂をみせる本作。明朗な痛快作である一方、後に繋がる宮﨑アニメの元素は健在。大野雄二の劇伴も冴える冒頭の派手なカーチェイス、ルパンが少女クラリスを幽閉されている塔から救出するため急勾配の屋根を駆け抜ける動作は爽快!城やそれを囲む水流の絵画的な描写も印象的。凛とした強さを持つヒロインのクラリスの声優はナウシカと同じ島本須美。どれも長年語り継がれる名場面だ。子供向けと思ったら大人も一緒に虜になってしまう、何度でも。

ルパンの宿敵・銭形警部は、偽札を巡る国際政治の権力と世論重視を目の当たりにし正義と理想の狭間で一度は失望する。成熟した大人の目でスクリーンをじっくりと観て、本作の新たな魅力を発見したい。


上映日/2024年2月4日(日)13:10〜
提供=ユタカサービスグループ