砂の器(1974年/野村芳太郎監督)
藤本逸子
実行委員会 理事
豊橋創造大学 短期大学部 名誉教授
「砂の器」は、人権にかかわる重いテーマを投げかけています。人間は、己の何かを守るために、他者の大切なものを拒否してしまうことがあります。その「大切なもの」が人権そのものであっても、です。
この作品の中で、大きな位置を占めるのが音楽です。音楽監督は、小説家芥川龍之介の子息である芥川也寸志です。「砂の器」の音楽関連費用は、平均の三倍以上だったとのこと。芥川のこだわりが生かされた所以でしょう。
加藤剛が演じる主人公は、作曲家兼、ピアニスト。登場人物の心の動きが、音楽で表現されています。演技と台詞では、なかなか感じることが難しい「深い心の思い」を音楽から感じとることができます。「これは、素晴らしい。小説では表現できない」と、原作者の松本清張が感心したそうです。
「砂の器」の音楽を作曲したのは、菅野光亮です。ピアノ演奏も菅野自身が行っています。「砂の器」の公開は1974年、菅野35歳の作品です。菅野は、映画音楽、テレビドラマ音楽を数多く手掛け、その中に松本清張原作が沢山含まれています。菅野は、1983年、44歳で亡くなっています。もっともっと活躍していただきたかった。残念です。
「砂の器」では、主人公が「宿命」を作曲し、ピアノ演奏とオーケストラの指揮を行っています。「宿命」の演奏中、美しい「日本の四季」が映し出される場面があります。これも貴重です。「日本の四季」が危うく感じられる今日この頃です。
上映日/2026年2月1日(日)13:30〜
協賛=株式会社オノコム