パピヨン(1973年/フランクリン・J・シャフナー監督)
伊藤篤哉
実行委員会 理事
(株)吾妻家 代表、豊橋市 市議会議員
映画『パピヨン』は、仲間の裏切りで殺人の冤罪を被せられ終身刑となり、13年間悪魔島での刑務所生活を強いられたフランス人作家アンリ・シャリエールの実話に基づく小説を原作とした作品として1973年に公開された。
胸に蝶の刺青を入れた『パピヨン』と渾名された男を Sマックイーンが、流刑中親友となる男ドガをDホフマンが演じる。迫真の囚人像は、南海の孤島の美しさ、海原を跳び越すモルフォ蝶の自由さとは真逆で、生気を消失させ鬼気に迫るものだ。
また、Jゴールドスミスによる「パピヨンのテーマ」は哀愁を湛え、Aウィリアムスのカバーソングは一層切なかった。
ところでフランスといえば、孤島からの脱出話には事欠かない。エルバ島から脱出したナポレオン。偽りの密告で逮捕され復讐事件を基とするデュマの「モンテ・クリスト」。ドレフェス大尉事件。それらゲール人的嗜好を基に『パピヨン』は原作者シャリエールの自伝と、私は信じて疑わなかった。
が、改めて原作を開いて驚いたのは、『パピヨン』は「自らを社会に対する反逆的英雄に仕立てあげようとするアンリ・シャールの欲望を投影した自伝的虚構」であったこと。原作には蝶がほとんど出ないが、フランス語では蝶も蛾も同じ言語を記号体系としている。近代言語学の祖フェルディナン・ド・ソシュールは「言語とは、差異・区別のシステム」と解き明かす。貴方は自由を求めるパピヨンとドガの差異・区別を如何に感じるのか?
上映日/2026年2月15日(日)13:30〜
協賛=小池商事株式会社