ここが見所

雪の花 ーともに在りてー(2025年/小泉堯史監督)

山本訓之

実行委員会 理事
(株)エクスラージ デザイナー

吉村昭原作小説の映画化作品。江戸時代末期、福井藩の町医者を松坂桃李が演じ、未曽有の疫病である疱瘡(天然痘)に対し、日本で初めて種痘予防という治療法を確立した実話をもとに描かれている。物語は、妻役の芳根京子との夫婦の情愛や、師である役所広司の教え、そして協力者たちとの絆を軸に展開していく。

演出を手がけるのは、「雨あがる」「峠 最後のサムライ」などで知られ、黒澤明監督の助監督経験を持つ小泉堯史監督。本作の魅力は、エピソードを丁寧に積み重ねていく構成にある。福井や京都の四季の移ろいを捉えることで、その美しさだけでなく、主人公が目的のために費やした長い年月が伝わってくる点が印象的だ。

物語後半、主人公が自身の孫に試みた種痘が成功し、京都で種痘が始まる。主人公は福井へ向かうが、猛吹雪の峠を越えて種を届ける必要があり、この吹雪の山中での場面が物語に強いアクセントを与えている。福井到着後、家老や老中を通じて藩の許可を得て種痘が始まるクライマックスへと至る。

時代劇でありながらアクションは抑えられており、松坂桃李が唯一動きを見せるのが福井で妨害を企てる医者たちが雇ったごろつきに立ち向かう場面のみである。良心を信じ、困難な道を選んだ人々の願いと努力が、やがて実を結ぶ。本作は、人間の良心への賛歌となっている映画だといえる。また、デジタルではなくフィルム撮影が用いられており、映像の質感は非常に豊かで味わい深い。

役所広司の存在感をはじめ、吉岡秀隆、三浦貴大といった実力派俳優が揃った本作を、ぜひスクリーンで味わってほしい。


上映日/2026年2月8日(日)9:30〜
協賛=スバル東愛知販売株式会社