ここが見所

片思い世界(2025年/土井裕泰監督)

高倉嘉男

実行委員会 企画理事
(学)高倉学園豊橋中央高等学校 校長
インド映画研究家

「片思い」という、つい青春時代を思い出してしまう甘酸っぱい言葉に、「世界」という汎用的な単語をくっ付け、何となく分かったような分からないような、不思議な印象を醸し出した題名の映画である。恋愛映画ではあるが恋愛映画ではなく、片思いが最終的に両思いになって成就するわけでもないしそれを求めるわけでもない。詳しく紹介したいが、そうすることで未見の人の楽しみを奪ってしまうというジレンマを抱える。何とも捉えどころのない映画だ。だが、非常に面白いということだけはいっておく。

大ヒットした恋愛映画『花束みたいな恋をした』(21)を監督した土井裕泰と脚本を書いた坂元裕二が再びタッグを組み、今をときめく三人の女優、広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演という豪華な布陣。

舞台は東京の片隅にある一軒家。小学校時代からの友人である美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)が共同生活を12年間続けてきた。彼女たちは毎朝、仕事、学校、アルバイトに出掛け、夕方には帰ってきて、一緒に夕食を食べながら、あれこれ語り合う。彼女たちは三者三様の「片思い」を抱えており、物語の進行と共にそれぞれの「片思い」に決着を付けていく。

重層的な演出・空間・時間の積み重ねの中で、「片思い」という言葉が単に「報われない思い」を示すのではなく、「誰かを思い続けること」で世界が開かれる可能性を帯びていく――そんな視点が、観る人の胸に静かに残る。『片思い世界』は、日常と少しだけずれたところにある「思いの景色」を丁寧に描き出した、愛と希望の物語だ。


上映日/2026年2月7日(土)9:30〜
協賛=オーギヤグループ