ここが見所

ガンジスに還る(2016年/シュバシス・ブティアニ監督)

高倉嘉男

実行委員会 企画理事
(学)高倉学園豊橋中央高等学校 校長
インド映画研究家

ヒマーラヤ山脈に端を発し、インド北部の平原地帯をベンガル湾に向けて流れるガンジス河は、インドの人口の8割を占めるヒンドゥー教徒にとってもっとも聖なる河だ。流域にはいくつもの聖地が点在しているが、その筆頭がヴァーラーナシーである。バナーラスやカーシーなどとも呼ばれる古都であり、日本語ではしばしばベナレスと書かれる。

ヒンドゥー教徒は基本的に輪廻転生を信じる人々だが、ヴァーラーナシーで荼毘に付され遺灰をガンジス河に流されることで、その魂は輪廻転生の苦しい鎖を断ち切り、解脱することができるとされている。そのため、ヴァーラーナシーには老人や病人が最期のときを待つための施設が点在している。

「ガンジスに還る」は、死期を悟った老人が、ヴァーラーナシーの「解脱の館」に居を移し死を待つというインド映画である。だが、決して重苦しい物語ではない。勝手にヴァーラーナシー行きを決めてしまった老いた父親に振り回される息子の視点からコメディータッチでストーリーテーリングがなされ、父と子の絆を再確認した上で、生と死について見つめ直す内容になっている。

何の前智識なしに観てもある程度楽しめる作品ではあるが、インドの文化は奥深く、解説があるとその理解と楽しみは全く異なってくる。映画上映終了後には豊橋在住のインド映画研究家である筆者が解説をし、映画の解像度を上げる。映画祭でなければ味わえない体験になるだろう。


上映日/2025年2月22日(土)9:30〜
協賛=豊橋信用金庫