ここが見所

ふたりのマエストロ(2022年/ブリュノ・シッシュ監督)

藤本逸子

実行委員会 理事
豊橋創造大学 短期大学部 名誉教授

ふたりのマエストロ」は、父と息子の愛と葛藤の物語です。父親フランソワは、指揮者です。息子ドニも、指揮者です。

この作品を見て、大きく2つ、驚きました。
その1つ目は、最初の最初、映画が始まってすぐです。ドニが、指揮者コンクールに入賞して、受賞者の挨拶をする場面です。世界的大指揮者として「オザワ」の名が出てきます。「小澤征爾」のことです。日本人の筆者としては、非常にうれしくなる出だしです。このスピーチ、一捻りも、二捻りもした言葉の表現で笑いを誘いながら、指揮者としての抱負を語っています。これをフランスのエスプリというのでしょうか。

1つの間違い電話により、ドニは、父親と自分との関係を深く考えることとなります。
ドニは、夜中にただ一人、パソコンの動画で演奏される曲を聴きながら、父親宛に手紙を書きます。この時の動画の中の指揮者が、小澤征爾です。心に沁みる歌声とオーケストラの響きは、ドニの苦悩の深さを感じさせます。

いろいろな変遷を経て、この作品の最後の最後に、2つ目の大きな驚きが、待っていました。あまりの意外さに、「ひゃ!」とびっくり仰天しました。
「驚き、桃ノ木、山椒の木、ブリキに、狸に、蓄音機」
筆者が幼いころ、祖母も、母も、筆者も、非常に驚いた時、これを唱えていました。この作品を見て、久々に、このフレーズが口から飛び出しました。


上映日/2025年2月16日(日)13:10〜
協賛=ユタカサービスグループ