ここが見所

PERFECT DAYS(2023年/ヴィム・ヴェンダース監督)

映画祭ファン
「こんな風に暮らせたら。」
この映画を見た後、何人もの人がそう言うのを聞いた。役所広司演じる主人公の仕事はトイレの清掃員なのに。おんぼろのアパートに住み、もちろん贅沢なんかしていない。でも、日々の暮らしのディテールが、見る人にそう思わせてしまうということだ。

監督のヴィム・ヴェンダースは、小津安二郎を崇敬しているという。彼が撮ってきた何本ものロードムービーも、どれも淡々と景色が流れ、見終わると少し心が温かくなっているようなさりげないものだった。そういう意味では、まさしくこの映画も、小津の流れを汲んだヴェンダースの映画だと思う。

日々の暮らしが淡々と流れる。主人公の過去を思わせる出来事も起こるのだが、それすら余分かと私は思った。仕事はどこまでも丁寧にやり、終わった後は自転車で大衆飲み屋に行く。時には素敵なママがいる店にも。行き帰りのトラックでは、テープで洋楽を聞き、ファインダーを覗かず撮った木々の葉の写真を現像してもらうのを楽しみにしている。世捨て人ではない。でもどこまでも自分の世界に生きる。現代人があこがれるのは、こういう暮らしなのかと思うのだ。


上映日/2025年2月2日(日)16:00〜
協賛=豊橋倉庫グループ