ここが見所

アメリ(2001年/ジャン=ピエール・ジュネ監督)

上栗陽子

実行委員会 理事
穂の国とよはし芸術劇場 事業制作リーダー

サスペンスのようでいて、なんてキュートなコメデイだろう。そして不器用な登場人物たちを丸ごと包み込む全肯定感。現実は色々ムズカシイ。だけど「あなたはいつだって素晴らしい存在だ」という気持ちにさせてくれる。毒気と多幸感を同時に感じられる映画だ。

『アメリ』は2001年に公開。当時シネマカルチャーを牽引していたミニシアター「シネマライズ」で歴代1位のロングランを記録。47都道府県に拡大上映され大ヒットし「アメリ現象」となる言葉まで出現し社会現象化。パリ・モンマルトルを舞台とした世界観はファッションにも大きな影響を与え、観光地としても有名になるほど。

子どもの頃からずっと孤独だったアメリ。ダイアナ妃の事故死ニュースをきっかけに、自分だけの夢世界から現実社会へ踏み出そうとする。テレビニュース映像が随所に差し込まれ、例えばダイアナ妃がアメリ自身にすり替わっていくのも象徴的。カフェで働き、それなりに男性とも交際経験もあり友人もいるけれど、アメリだけの社会から出られずにいる点をとても丁寧に細かく描いている。この辺りの描写はむしろ現代と思えるほど。他人を幸せにするため悪戯かお節介ともいえる行動をしていたところ、証明写真をゴミ箱から収集する変わった趣味をもつ青年ニノに出会い恋をするあたりからドラマが加速。ガラスや電話など様々なフィルターを通してニノに近づくが、真正面から会う勇気が持てないアメリに老人はそっと背中を押す。「お前の骨はガラスじゃない、人生にぶつかっても大丈夫だ。」

オドレイ・トトゥがこのちょっと変な女の子を魅力たっぷりに演じている。監督は「デリカテッセン」「エイリアン4」などで独自のダークな世界観をもつジャン=ピエール・ジュネ。ジュネ監督監修のデジタルリマスター版が2023年にリバイバル公開されたのをきっかけに、今回スロータウン映画祭で上映することになりました。20年の時を経て、色彩はより豊かに今なお愛される名作として楽しめます。幸せのために一歩踏み出す軌跡とアメリたちが引き起こす奇跡をスクリーンでぜひお楽しみください。


上映日/2025年1月25日(土)13:10〜
協賛=株式会社物語コーポレーション